司法書士事務所の名称の定め方

本記事では、司法書士事務所の名称の定め方や規制について、また、弊所「YOSHIDA OFFICE」の名称由来を記載しています。

司法書士事務所の名称の制限

使用強制語句

司法書士法人であれば、司法書士法により「司法書士法人」という文字を使用する必要がありますが、司法書士事務所の名称については、書士法や会則でも特に使用強制される文字はありません。

司法書士法
第二十七条 司法書士法人は、その名称中に司法書士法人という文字を使用しなければならない。

「事務所の名称」に関する取扱要領(日本司法書士会連合会)から抜粋
連合会会則第37条第4項において規定する「事務所の名称」は、司法書士法施行規則第20条の規定による「司法書士の事務所である旨の表示」とは異なるため、必ずしも「司法書士」の文言が含まれなくとも良いものとする。

調べてみると、東京司法書士会では、登録された事務所の86%*が「司法書士事務所」という名称を含んでいましたが、特に「司法書士事務所」という名称を入れなくてはならないわけではありません。

(*2020年6月19日時点で、東京司法書士会登録の司法書士事務所は412件で「司法書士事務所」という語句を含む事務所は353件でした)

登録されている司法書士の事務所名称は下記より調べられます。

司法書士事務所の名称について(日本司法書士会連合会)
https://www.shiho-shoshi.or.jp/member/office_list/

他士業の事務所名称の制限

一方で、弁護士の事務所であれば「法律事務所」、行政書士であれば「行政書士」、税理士であれば「税理士事務所」と、各士業では事務所名称として強制される文字が定められていることが一般的です。

法律事務所等の名称等に関する規程
第三条 弁護士はその法律事務所に名称を付するときは事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならない。

事務所名称に関する指針
1.「行政書士」の明示
事務所の名称中には、「行政書士」の文言を明示すること。

税理士法
第四十条 (省略)
2 税理士が設けなければならない事務所は、税理士事務所と称する。

連合会会則による制限

かといって、司法書士事務所は名称はなんでもありなのか?といったらそうでもなく、司法書士会連合会会則37条4項と司法書士会会則基準96条で定められています(下記は東京司法書士会の会則)。

要は、法規制のある、同じ書士会にすでにある、公的機関と紛らわしい、品位を害する、公序良俗に反するような名称はダメみたいです。

司法書士連合会会則
第37条 1~3 (省略)
4 連合会は、事務所の名称を定めた者から、その名称の記載又は記録の申請があつたときは、第1項第2号の事務所の所在地に名称として併記する。ただし、他の法律において使用を制限されている名称又は司法書士の品位を害する名称は、この限りでない。

東京司法書士会会則
第111条 司法書士会員又は第5条第3項第1号の法人会員は、本会の区域内で既に司法書士名簿に記載されている司法書士会員の事務所の名称又は法人会員の名称と同一の名称を使用してはならない。ただし、次に掲げる場合についてはこの限りでない。
(1)司法書士会員が、その氏又は氏名(職名を含む。)を使用する場合
(2)法人会員が、社員の氏又は氏名(職名を除く。)を用いる場合
(3)司法書士会員が、現に司法書士名簿に記載されている名称を当該司法書士会員が社員となって設立する司法書士法人の名称として使用する場合
2会員は、事務所の名称につき官公庁その他公共機関名と紛らわしいもの、公序良俗に反するもの、その他司法書士の事務所としてふさわしくないものを使用してはならない。

「同一の名称」とは

そして、上記の「同一の名称」をどのように判断するかの基準については、司法書士会連合会により解釈が示されています。

平成17年5月6日付日司連発第127号 【 別 紙 】
@「同一の名称」に該当するか否かについては、名称のうち「司法書士」「事務所」「司法書士事務所」「司法書士法人」等を除いた部分について判断するものとする。
@それ以外については、全くの同一以外は、同一とみなさない。

事務所として定めたい名称を下記リンクで調べて一致するものがないか調べるとよいでしょう。

司法書士事務所の名称について(日本司法書士会連合会)
https://www.shiho-shoshi.or.jp/member/office_list/

名簿記載が受理されない名称

その他、司法書士会連合会は、実際の事務所における表示として制限するものではないものの、連合会に名称の保護を求めるために司法書士名簿への記載を申請する場合は不受理となる名称について以下のとおり定めています(届出は任意)。

「事務所の名称」に関する取扱要領(日本司法書士会連合会)
(1)他の法律において使用を制限されている名称
「法律」との文言が含まれているものは不可とする。

(2)他の資格と誤認されるおそれのある名称
① 他業種と誤認されるおそれのある文言が含まれる名称は不可とする。
例:「行政」「会計」「税務」「経済」「測量」
② 司法書士個人として届け出るため、兼業者の場合であっても他資格の名称が含まれるものは不可とする。
例:「行政書士」「土地家屋調査士」
「法務」を含む名称には必ず「司法書士」との文言を明記するものとする。
「法務」は「法律」と類似しており、弁護士事務所と誤認されやすいと考えられることから、名称中に「司法書士」の文言を含めることにより認めることとする。司法書士法人には「司法書士法人」をその名称中に含めることにより、「法務」を含む名称が可能であることから、個人と法人の名称での均衡を図るものである。

(3)司法書士の品位を害する名称

「法務」という語句を名称に含みたいときは要注意です。

「司法書士の品位を害する名称」とは

上掲「事務所の名称に関する取扱要領」の 2.(3)「司法書士の品位を害する名称」とは何でしょうか。

東京司法書士会は、連合会(平成 22 年 9 月 28 日付)の以下の見解を紹介しています。

連合会では、事務所に所属する司法書士でない者の人名を主たるものとする事務所名称の使用を避けるようお願いして参りました。 その理由は、このような名称使用を認めると架空の者の氏又は氏名を事務所名称として使用できることを一般に許容することとなり、司法書士を利用する国民に対し「架空の司法書士が所属する司法書士事務所」と誤認させる恐れがあるものと考えられるからです。

例えば、坂上田村麻呂司法書士事務所なんて名称は避けるようお願いされています。

法令による規制

商業登記法(組合等登記令による準用)

事務所名称と同一で将来的な法人化を検討しているのであれば同一商号・同一本店の会社・法人は存在しないか確認をしておくとよいでしょう(組合等登記令25条による準用、商業登記法27条)。

オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について(法務省)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00076.html

商業登記法
(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
第二十七条 商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

商標法

さらに、事務所名称につき、商標登録されていないかも確認しておくとよいでしょう。

事務所名称と同一又は類似の商標が登録されており、同一又は類似の指定商品又は指定役務である場合には、商標権者より差止、損害賠償等を受ける可能性があります(商標法25条、36条、37条、38条、民法709条)。

特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

商標法
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。 ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

なお、上記リンクで司法書士事務所を調べてみると、法人格がなくても商標登録している事務所もいくつかありますので、商標登録してしまうのも一つの選択肢でしょう。

不正競争防止法

また、商標登録されていない名称であっても、周知されているか著名な名称は、不正競争防止法の観点から、事務所名称としては避けておくのが無難でしょう。

(定義)
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

「YOSHIDA OFFICE」と定めたわけ

と、前置きが長くなりましたが、上記の前提を踏まえたうえ、以下の条件に合致するものとしての帰結として、弊所は「YOSHIDA OFFICE」という名称に相成りました。

・誰でも読める
・シンプルである
・先進性を感じられる
・電話でも聞き取りやすい
・画数が少なく書きやすい
・誰が代表か一目瞭然である
・ベンチャー・スタートアップ企業が親和性を感じやすい

最後まで「YOSHIDA OFFICE」とするか「Yoshida Office」とするかに悩みましたが、後者は洒落れてはいるものの視認性が悪くパワーに欠けるということで、最終的には前者としました。力こそパワー。

ということで今後とも「YOSHIDA OFFICE」をよろしくお願いいたします。

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