東京司法書士会三多摩支部さんからオファーを受け、2026年9月11日、「商業登記のデジタル完結/完全オンライン申請の実務~新・商業登記電子証明書(リモート署名方式)の導入を受けて、まず始められること~」というテーマで研修講師を務めました。オンラインでの参加は支部外も含めて150名以上の方にご参加頂きました。
実は、三多摩支部さんには2023年7月にもお声がけいただいており、今回で3年ぶり2回目の登壇となります。当時からたった3年しか経っていないのですが、資料の9割は一新しており、制度の移り変わりの早さに自分でも驚きました。
今回のテーマの核は、2026年7月から始まった新しい商業登記電子証明書の「リモート署名方式」です。これまでの「ファイル形式」(電子証明書をPCなどローカル環境に保管し、ローカルで電子署名する方式)に対し、リモート署名方式は電子証明書をクラウド上に保管し、WEB上で電子署名を行う方式です。研修では、この制度変更を踏まえて、司法書士が実務としてヒアリングから電子署名の案内、登記書類の案内、署名依頼、署名検証、登記申請、完了後処理まで、7つのステップでどう対応すべきかを一通り解説しました。

リモート式の商業登記電子証明書、何がどう変わったか
商業登記電子証明書のリモート署名には2通りの方式があります。
- ①署名ドライバ方式(2026年7月21日開始):現行のファイル形式の署名方法に近く、「Adobe Acrobat Reader」や「申請用総合ソフト」に法務省提供の署名ドライバソフトを組み合わせて署名する方式
- ②システム連携方式(2026年9月30日開始予定):「GビズID」でログインする「Gビズポータル」(事業者版マイナポータル)内の「電子ロッカー」から署名する、よりクラウドらしい方式
結果として、商業登記電子証明書は「ファイル形式」「リモート署名/署名ドライバ方式」「リモート署名/システム連携方式」の3方式が群雄割拠、当面併存することになります。
なお、既存のファイル形式の商業登記電子証明書は2030年まで継続利用可能、電子認証ソフトによる取得も引き続き可能です(ただし、ソフトのサポートは2027年3月で終了予定)。
| 商業登記電子証明書 旧・ファイル形式 | 商業登記電子証明書 新①リモート/署名ドライバ | 商業登記電子証明書 新②リモート/システム連携 | |
|---|---|---|---|
| 開始時期 | ・継続して署名利用可(〜2030年) ・新規に証明書発行も可能 | 2026年7月21日〜 | 2026年9月30日〜 |
| 証明書取得 | ローカル(PC) 「商業登記電子認証ソフト」(2027年3月でサポート終了予定) +申請用総合ソフト等(PC) | 「GビズID」の取得 +(WEB) 「商業登記電子認証ポータルシステム」 ※Windows/Mac/iOS/Android可 +申請用総合ソフト等(PC) | 同左 |
| 電子署名 | ローカル(PC) 「Adobe Acrobat」等 or(WEB)「サインルーム」「しほうサイン」等 | ローカル(PC) 「Adobe Acrobat」等 +「署名ドライバソフト」 ※Windowsのみ可 | クラウド(WEB) 「Gビズポータル」内「電子ロッカー」 |
| 認証 | パスワード | パスワード+スマホアプリ「GビズIDアプリ」 | 同左 |
| 料金 | 500円/1か月~8,300円/27か月 | 同左 | 同左 |
この「ファイル形式」「リモート署名/署名ドライバ方式」「リモート署名/システム連携方式」によって利用可能な行政手続システム・署名アプリケーションも異なってきます。

法務省|ご利用可能な商業登記電子証明書の方式・形式について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00256.html
完全オンライン申請に向けた署名運用について私見(2026年9月11日時点)
研修では、実務でどの証明書でどの署名方法を選ぶべきかについても私見を述べました。
- マイナンバーカードでの電子署名を第一候補とし、「しほうサイン」か「サインルーム」で案内
- 商業登記電子証明書(ファイル形式)も同様に「しほうサイン」か「サインルーム」で案内(自社署名の企業には「申請用総合ソフト」)
- 商業登記電子証明書(リモート/署名ドライバ方式)は事前準備・署名操作が面倒・煩雑なため、必要な場面以外では現状では選択肢外
- 商業登記電子証明書(リモート/システム連携方式)は「Gビズポータル」の「電子ロッカー」の完成度次第。署名依頼から検証まで一気通貫できる可能性に期待しつつ、クライアントにGビズIDを取得させる手間との天秤
行政サービスによってリモート署名の対応方式(署名ドライバ/システム連携)が異なる点にも注意が必要です。用途によっては、当面は従来のファイル形式の方が無難な選択となる場面もあります。
アンケート結果から
研修後のアンケート結果では「大いに参考になった」が71%、「参考になった」が29%と、全回答者から前向きな評価をいただけ安堵&安堵。研修内容についても「だいたい知らない情報だった」「ほとんど知らない情報だった」との回答が合わせて79%にのぼり、実務経験のある方にも新しい情報をお届けできたようです(その裏返しで「少し難しかった」「難しすぎた」との声も71%あり、難易度調整は次回への課題です)。
「商業登記の完全オンライン申請に挑戦したいか」という設問には、回答者の92%が「挑戦したい」と回答してくださいました。実務に踏み出す後押しになったなら何よりです。
いただいた声の一部を匿名でご紹介します。
研修内で宣伝していた書籍は所有していましたが、出版後の改正で変更になった部分の解説もあり、非常に為になりました。
ダミーデータ・マスキングしたデータに署名・署名検証を行う動画等の資料があると、よりわかりやすいと思いました。
網羅的でありながら実務にすぐ役立つ情報を交えた講義でした。ありがとうございました。
一方で「完全オンラインに実益を感じない」という率直なご意見や、GビズIDアプリと紐づけた「端末変更時の手続きを知りたい」といった具体的なご要望もいただきました。今後の研修・記事のテーマとして活かしていきます。
商業登記のデジタル化・完全オンライン申請に関する研修のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
(最新情報はTwitter(X)@yoff_jp でも発信しています)
これまでの研修講師歴
- 2022年11月 東京司法書士会 世田谷支部
- 2023年7月 東京司法書士会 三多摩支部
- 2023年11月 東京司法書士会 城北支部
- 2024年3月 京都司法書士会 城南支部
- 2024年5月 東京司法書士会専門研修会
- 2024年9月 東京司法書士会 中野支部
- 2025年2月 Cessa(一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会)
- 2025年11月 大阪司法書士会 北支部
- 2026年1月 北海道司法書士会 十勝支部
- 2026年9月 東京司法書士会 三多摩支部

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