バーチャルオンリー型組合総会・理事会開催のための定款変更案・招集通知・議事録等

本記事では、経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2021年5月14日公表)から要点を抜粋し、事業協同組合等が、バーチャルオンリー型組合総会・理事会を開催するための定款変更案、組合総会の招集通知、組合総会議事録・理事会議事録等を紹介します。

経済産業省|「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しました

概要

従来、事業協同組合等は、総会及び理事会のいずれについても、議事録に開催「場所」を記載することが求められていたため、バーチャルオンリー型組合総会・理事会を開催することはできませんでした。

この度、コロナ禍によるニーズの高まりを背景に、バーチャルオンリー型組合総会・理事会を開催できるよう、中小企業等協同組合法施行規則、中小企業団体の組織に関する法律施行規則、商店街振興組合法施行規則及び技術研究組合法施行規則(以下併せて「省令」といいます。)が改正されました(2021年5月14日に公布・施行)。

なお、本改正には、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」の閣議決定(令和3年2月5日)により、一定の条件で上場企業にバーチャルオンリー型株主総会の開催が許容されたことが背景にあります(執筆時点では、非上場の株式会社にバーチャルオンリー型株主総会は認められていません)。

バーチャル開催の前提となる環境整備

システム環境の整備
・情報伝達の「双方向性」と「即時性」が確保されたインターネット等の手段であること
・バーチャル出席組合員が①総会に出席し、②審議に参加し、③議決権・選挙権を行使することができるシステムであること

通信障害の防止に向けた合理的な対応策の検討
・通信障害発生時の対処の検討、代替手段の確保
・事前の通信テストの実施
・事前の議決権行使の促進

事前の組合員への情報提供例
・アクセス環境(通信速度、OSやアプリケーション等)やアクセス手順(URL、ID・パスワード等)の事前通知
・議決権行使や質問方法等の通知
・通信障害が起こり得ることの告知

事前のルール整備
・定款、規約等の整備、理事会での協議
(本人確認方法や議決権行使方法、スケジュール等)
・事前の理事会にてバーチャル総会開催等の決定

バーチャル開催の法的論点

本人確認の方法

・バーチャル総会のID・パスワードを組合員個別にするか、共通にするか
個別ID▶個別ID・パスワードのログインで本人確認
共通ID▶ログイン時に目視等による本人確認

議決権の行使

(本人)
バーチャル出席 をして行う議決権行使は、事前の電磁的方法による議決権行使議決権行使ではなく、総会当日の議決権行使として取り扱われる。

(代理人)
・代理人によるバーチャル出席は認められるが(要定款規定)、バーチャル出席とリアル出席とで合理的な区別を行うことは許容され得る 。
・定款変更し、代理人による議決権行使をリアル 組合総会に限定することも実務上検討の余地あり(組合員に対しての要事前周知)。

(事前の議決権行使)
・事前の議決権行使(書面、電磁的方法)をした組合員がバーチャル出席した場合の取扱いにおいて規約等でルールを定める(バーチャル総会へのログイン時に事前の議決権行使を無効にする等)。

(議決権数のカウント)
・バーチャル出席組合員の途中退場・途中入場のルールを定める(例:招集通知で「バーチャル出席組合員におかれまして、 総会 当日に議決権を行使されなかった場合は、一律に棄権されたものとして取り扱います。」といった内容を定める等)。

組合員からの質問・緊急議案・動議の取扱い

(質問)
バーチャル出席組合員についても、質問回数や方法等を制限することは可能だが、リアル組合総会と同様に、あらかじめ理事会の協議や規約等でルールを定め 、招集通知等にて周知が求められる 。

(緊急議案)
・緊急議案は、「会議の目的」となっていない事項を総会の場で提案すること。
・定款に定めがあれば、バーチャル出席組合員にも当然に緊急議案の提案は認められる。
・ハイブリッド型バーチャル組合総会では、緊急議案の提案をリアル出席組合員のみにも認めることも実務上検討の余地がある。
・バーチャルオンリー型組合総会では、緊急議案の提案を一切制限することも実務上検討の余地がある。
・緊急議案の提案を制限する場合は、定款変更とともに招集通知等での事前周知が必要である。

(動議)
・動議は、「会議の目的」となっている事項の具体的な議案を総会の場で提案すること。
・ハイブリッド型バーチャル組合総会においては 、緊急議案と同様に動議をリアル出席組合員のみに認めることが 許容され得る。
・バーチャルオンリー型組合総会においては、リアル組合総会の実務にならい、議長の裁量によって、出来る限り動議を取り上げることが望ましい
・動議の提案時期や回数について一定の制約を設けることは当然に許容されるし、質問と同様に濫用的な動議は許されない。

役員の選出

(選挙権の行使歩法)
・バーチャル組合総会では、組合員が自らバーチャル出席して選挙権を行使することは当然に可。
・定款規定があれば、代理人がバーチャル出席して選挙権を行使することも可。
・書面行使の定款規定があれば、バーチャル組合総会でも、書面による選挙権行使が当然に可。

(無記名投票)
・選挙人の氏名を記載せず、選挙人以外の第三者が選挙人の投票内容を確認することができないシステム・サービスを利用する限りにおいて、バーチャル組合総会でも無記名投票の役員選挙の実施が可。
・無記名投票の可否について個々のシステムやサービスをよく精査する必要あり。

(役員選出方法)
a.連記または単記式投票制:無記名投票以外の方法不可
b.立候補制または推薦制+連記または単記式投票制:立候補者又は推薦を受けた者の数が選挙すべき役員の数と同数の場合は、無記名投票が問題となることはない。
c.指名推薦制+連記又は単記式投票制:無記名投票の例外として、出席者全員の同意が得られた場合には、指名推選の方法を採用可。
d.選任制:定款に定めることで、出席者の議決権数の3分の2以上の多数による議決により、投票以外の方法、すなわち、挙手又は起立等によって行うことができる。

招集通知の発送スケジュール

・バーチャル出席のために必要なID・パスワード等は、法が定める招集手続において通知すべき事項であり、組合は、総会の10日前(又は定款で定めた期間)までに必ずこれらを通知しなければならないと考えられる。

(総会手続スケジュール例)

(招集通知の記載事項)
バーチャル組合総会を開催するにあたっては、総会の開催場所又は開催方法とともに 、組合員がインターネット等の手段を用いて総会に出席し、審議に参加し、議決権や選挙権を行使するための方法 、具体的には、バーチャル出席のために必要な ID・パスワード 等、アクセス先 URL、バーチャル出席組合員による議決権 ・選挙権行使の具体的方法等を招集通知(招集通知本体に同封する別紙案内書や事前登録者に後日送付する別紙 案内書 等を含む。以下同じ。)に記載する必要がある。

通信障害

・ハイブリッド型バーチャル総会では、組合が通信障害のリスクを事前に組合員に告知しており、かつ、通信障害の防止のために合理的な対策をとっていた場合には、組合側の通信障害により組合員が審議又は決議に参加できなかったとしても、決議取消事由(中協法第 54条等)には該当しないと解することも可能である。
他方、バーチャルオンリー型組合総会においては、通信障害が発生した場合、一切審議ができず 、決議ができなくなる ことが想定され、当該総会決議は不存在となる可能性が高いと考えられる (中協法第54条等)。
・いずれにせよ、組合としては、通信障害の防止に向けた合理的な対応策等 を取るとともに、組合員に通信障害のリスクを事前に告知しておくことが重要。

バーチャル開催の主体となる組合等

中小企業等協同組合法(中協法)
・事業協同組合
・事業協同小組合
・信用協同組合
・協同組合連合会
・企業組合
・中小企業団体中央会

中小企業団体の組織に関する法律(中団法)
・協業組合
・商工組合
・商工組合連合会

商店街振興組合法(商振法)
・商店街振興組合
・商店街振興組合連合会

技術研究組合法(技組法)
・技術研究組合

(2021/05/21追加)
輸出入取引法(輸取法)
・輸出組合
・輸入組合

バーチャルオンリー型で開催するための定款変更案(事業協同組合の例)

現行定款

(総会招集の手続)
第41条 総会の招集は、会日の10日前までに到達するように、会議の目的たる事項及びその内容並びに日時及び場所を記載した書面を各組合員に発してするものとする。また、通常総会の招集に際しては、決算関係書類、事業報告書及び監査報告を併せて提供するものとする。
2~7 (略)

変更案

(総会招集の手続)
第41条 総会の招集は、会日の10日前までに到達するように、会議の目的たる事項及びその内容並びに日時及び場所(当該総会の場所を定める場合に限り、当該場所に存しない組合員が当該総会に出席する方法を含む。)又は開催の方法(当該総会の場所を定めない場合に限り、組合員が当該総会に出席するために必要な事項を含む。)を記載した書面を各組合員に発してするものとする。また、通常総会の招集に際しては、決算関係書類、事業報告書及び監査報告を併せて提供するものとする。
2~7(略)

現行定款

(総会の議事録)
第48条 (略)
2 前項の議事録には、次に掲げる事項を記載するものとする。
 (1)(略)
 (2)開催日時及び場所
 (3)~(11)(略)

変更案

(総会の議事録)
第48条 (略)
2 前項の議事録には、次に掲げる事項を記載するものとする。
 (1)(略)
 (2)開催日時及び場所(総会の場所を定めた場合に限る。)又は開催の方法(総会の場所を定めなかった場合に限る。)
 (3)~(11)(略)

現行定款

(理事会の議長及び議事録)
第53条 (略)
2 (略)
3 前項の議事録には、次に掲げる事項を記載するものとする。(1)(略)
(2)開催日時及び場所
(3)~(13)(略)
4  (略)

変更案

(理事会の議長及び議事録)
第53条 (略)
2 (略)
3 前項の議事録には、次に掲げる事項を記載するものとする。(1)(略)
(2)開催日時及び場所(理事会の場所を定めた場合に限る。)又は開催の方法(理事会の場所を定めなかった場合に限る。)
(3)~(13)(略)
4  (略)

通常総会の招集通知(ハイブリッド型)

第○回通常総会開催について

 このたび下記により第○回通常総会を開催いたしますので、ぜひご出席くださいますようご通知申し上げます。
 本総会への出席方法におきましては、当日、会場にご来場いただく方法のほか、会場にご来場いただけない場合 、 Web会議 システム を活用した「バーチャル出席」の方法により総会に出席いただくことが可能です。
 なお、当日いずれの方法でも出席できない場合、定款第○条の規定により、下記事項につき代理人または書面をもって議決権を行使することが可能です。同封の権利行使通知書(出席通知書、委任状用紙、事前権利行使書)に必要事項をご記入、ご捺印の上、○○月△△日までに到着するよう郵送又は直接、組合宛にご提出ください。
 ただし、委任状に限り、リアル会場では 総会当日に代理人が持参されても結構ですが、バーチャル出席で は 円滑な議事運営に支障があるため 当日持参の取扱いはできかねますのでご容赦ください。

1.開催日時  ○○年○○月○○日 ○○時より
2.開催場所  会場:○○
        Web会議システム: 下記4. 参照
3.議  案
  第○号議案 ○○
4.バーチャル出席に関する留意事項
◎バーチャル出席における出席方法について

「(別紙) Web会議システム を活用したバーチャル出席に関するご案内」をご覧のうえ、同案内に従って 出席(アクセス) してください。
◎その他行為制限
バーチャル出席時の行為制限につきましては、別紙案内書でご確認ください。

通常総会の議事録(ハイブリッド型&バーチャルオンリー型)

第○回通常総会議事録

1.招集年月日 ○○年○○月○○日
2.開催日時及び方法
(1)開催日時 ○○年○○月○○日 午前(午後)○○時○○分
(2)開催場所 ○○
(※バーチャルオンリー型の場合は、
   開催方法 Web会議システムによる
3.組合員数及び出席者数並びに出席方法
(1)組合員総数 ○人
(2)出席組合員数 本人出席:○人
         (うち、 Web出席 :○人)
          委任状出席:○人
          書面出席:○人
4.理事の数、出席理事の数並びにその出席方法及び氏名
(1)理事総数 ○人
(2)出席理事数 本人出席:○人
        (うち、 Web出席:○人)
(3)出席理事氏名 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○……
5.監事の数、出席監事の数並びにその出席方法及び氏名
(1)監事総数 ○人
(2)出席監事数 本人出席:○人
        (うち、 Web出席 :○人)
(3)出席監事氏名 ○○○○ ○○○○……
6.議長の氏名 ○○○○
7.議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名 ○○○○
8.議事の経過の要領及び議案別議決の結果
 定刻に至り、(氏名)が司会者となり、組合員総数及び出席者数を報告、定款規定の定足数を満たしており、本総会の成立を宣した。
 また、本総会において、一部の組合員が当組合指定のウェブサイトにログインする方法で参加しているところ、関連するシステムが特段の支障なく稼働していることが確認された。

~中略~

以上で、すべての議案等の審議を終了し、○○時○○分に閉会した。

理事会の議事録(ハイブリッド型&バーチャルオンリー型)

第○回理事会議事録

1.招集年月日 ○○年○○月○○日
2.開催日時及び場所【※ 1 】
(1)開催日時 ○○年○○月○○日 午前(午後)○○時○○分
(2)開催場所 ○○
(※バーチャルオンリー型の場合は、
   開催方法  Web会議システムによる
3.理事の数、出席理事の数並びにその出席方法及び氏名
(1)理事総数 ○人
(2)出席理事数 本人出席:○人
        (うち、Web出席:○人)
         書面出席:○人
(3)出席理事氏名 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○○……
4.監事の数、出席監事の数並びにその出席方法及び氏名
(1)監事総数 ○人
(2)出席監事数 本人出席:○人
        (うち、Web出席:○人)
(3)出席監事氏名 ○○○○ ○○○○……
5.議長の氏名 ○○○○
6.決議事項に特別の利害関係を有する理事の氏名
○○○○
7.議事の経過の要領及び議案別議決の結果
 理事の出席状況が確認され、定款の規定により理事長○○○○が議長に就任し、 本理事会は Web会議システムを活用して開催する旨宣言した。
 本組合が利用するWebテレビ会議システムは、出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認され、議案の審議に入った。

第1号議案 第○回通常総会の開催日時及び場所について
 総会の開催日時及び場所について、○○専務理事より説明があった。さらに、今回は Web会議方式によるバーチャル出席を認める総会とすることとし、総会招集通知案及びバーチャル出席案内書案が示された。議長が議場に諮ったところ、全員の理事が賛成し可決決定した。
(※バーチャルオンリー型組合総会開催の場合は、
第1号議案 第○回通常総会の開催日時及び方法について
 総会の開催日時及び開催方法について、○○専務理事より説明があった。 さらに今回は Web会議方式によるバーチャル オンリー型組合総会とすることとし、総会招集通知案及びバーチャル出席案内書案が示された。議長が議場に諮ったところ、全員の理事が賛成し可決決定した。)

第2号議案 第○回通常総会の議案 について
(以下略)

 以上により、 本日の Web会議システムを用いた理事会は、終始異状なく議案の全部の審議を終了したので、議長は午前(午後)○時○分閉会を宣した。
 本理事会の議事の審議要領及びその結果を明確ならしめるため、本議事録を作成し、出席理事は、次に記名押印する。

 ○○年○月○日
             ○○協同組合
             議長理事 ○○○○ 印
             出席理事 ○○○○ 印
             出席理事 ○○○○ 印
             出席理事 ○○○○ 印
             出席監事 ○○○○ 印

参考:経済産業省|「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しました

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