令和3年2月15日より、登記・供託オンライン申請システムに新機能が搭載されます。
1.定款認証と法人設立登記の同時申請に対応
2.商業登記電子証明書のオンライン請求が可能に
3.マイナポータルと連携
登記・供託オンライン申請システムの新たな機能について(令和3年1月)法務省民事局
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/information/info_202101.html#HI202101077829
1.定款認証と法人設立登記の同時申請に対応
申請用総合ソフトを使って,定款認証の嘱託と法人設立登記の申請を一度の操作で行うことができます。この機能を利用してされた申請は,一定の条件を満たせば,24時間以内に処理を完了します。
登記・供託オンライン申請システムの新たな機能について(令和3年1月)法務省民事局
スーパー・ファストトラック・オプションと呼ばれるもので、政府が日本を最高水準の起業環境とするための施策の一環です。従前までは、オンラインであっても、公証役場へ定款認証の申請を行い、認証済みの電子定款をGETしたうえで、法務局へ認証済みの電子定款を添付して申請するという二度手間であったので、それが一手間で済むようになるのは、申請人にとっても代理人にとっても喜ばしいことです。
そもそも、公証役場での定款認証やめたら早くない?とは思うものの。
設立の時間だけでなく、コスト面での負担(定款認証費、登録免許税)も、日本が起業環境で諸外国に大きく遅れをとっている部分です。
なお、「一定の条件を満たせば,24時間以内に処理を完了します。」のうちの「一定の条件」とは、現状での「24時間以内処理」の対象が下記であることから、これに近いものであろうと推察されます。
○ 役員等が5人以内であること
○ 添付書面情報(定款,発起人の同意書,就任承諾書等)が全て電磁的記録(PDFファイル)により作成され,申請書情報と併せて送信されていること(完全オンライン申請)
○ 登録免許税の納付が収入印紙ではなく電子納付が利用されていること
○ 補正がないこと
完全オンライン申請による法人設立登記の「24時間以内処理」を開始します(令和2年2月28日)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00006.html
2.商業登記電子証明書のオンライン請求が可能に
商業登記電子証明書の利便性向上のため,同証明書をオンラインで請求することも可能とします。
登記・供託オンライン申請システムの新たな機能について(令和3年1月)法務省民事局
これまで、オンライン申請を行うために必須であった商業登記電子証明書を法務局から取得するためには、申請書とCD-R、USBメモリ等を書面で持参または郵送で提出する必要がありました。このアナログさが一因で、商業登記電子証明書の普及は法人数のわずか1%程度の取得率に留まっていました。
* 商業登記電子証明書(有効枚数)は約3万枚(平成 30 年2月末時点。なお、平成 30 年末法人数は約 270 万社)
平成30年3月23日 第7回行政手続部会 法務省論点に対する回答より
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/bukai/dai2/20180323/agenda.html
この商業登記電子証明書がオンライン請求できるようになるというのは素直に大歓迎です(改正後商業登記規則第101条1項3号)。
しかし、これを機に商業登記電子証明書が爆発的に普及するかは疑問です。なぜなら同じく商業登記規則改正(令和3年2月15日施行予定)で、オンライン申請で使える電子証明書(印鑑提出者)が商業登記電子証明書一本だったのが、マイナンバーカード等にも範囲が拡大されるためです(現行商業登記規則第102条第6項の削除)。
なお、本改正では印鑑届出のオンライン申請も予定されていますが、これも本システム上からできるようになるのか注目です(改正後商業登記規則第101条1項2号)。
また、現状で商業登記電子証明書を取得するためには、オンライン申請に使う「申請用総合ソフト」とは別に「商業登記電子認証ソフト」が必要になるのですが、それもワンストップ化されるのか、続報が待たれます。
3.マイナポータルと連携
法人設立登記と定款認証手続を含めた,法人の設立関係手続のワンストップ化を実現するため,マイナポータル(法人設立ワンストップサービス)と連携します。
登記・供託オンライン申請システムの新たな機能について(令和3年1月)法務省民事局
これまで、会社設立”後”の手続き(税務署・労基署等への届出)については、オンライン上でワンストップできるようになっていました(要マイナンバーカード&カードリーダー)。
しかし、設立手続きで費用と手間の大部分を占める定款認証と登記申請は別枠だったので、どこが「法人設立ワンストップ」やねんと各所から非難があり、その認知も普及もあまり進んでいませんでした。
前々から構想されていたものですが、2021年2月にようやく真の「法人設立ワンストップサービス」が実現されるとのことです。厳密にはツーストップですが。
こちらが首尾よく機能していけば設立登記に関して司法書士はいずれお役御免となるでしょうが、起業環境が整うことは、商業登記の市場が拡大していくことでもあるので、大いに期待したいです。