代表取締役選定の取締役会議事録等への電子署名の種類につき

(本記事は令和3年2月15日以降の改正商業登記法等施行後の内容です。)

結論として、オンライン申請で添付する際の代表取締役選定(再任含む)の書面(取締役会設置の場合は取締役会議事録、非設置の場合は取締役互選書・株主総会議事録)のPDFファイルには、変更前の代表取締役以外・・はクラウドサインやGMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等の事業者署名型で電子署名し、変更前の代表取締役のみ・・が商業登記電子証明書やマイナンバーカードの当事者署名型で電子署名すれば足ります(書面申請で添付情報をCD-Rで提出する場合も同じ)。

言い換えれば、必ずしも出席取締役の全員が当該取締役会議事録へ商業登記電子証明書やマイナンバーカードの当事者署名型で電子署名しなければならないというわけではないということです(なお、代表取締役の選定が議案にない取締役会議事録であれば、全員がクラウドサイン等の電子署名でも足ります。)

以下、根拠について。

まず、前提として、代表取締役選定(再任含む)の登記申請の際、選定された取締役会議事録(取締役会非設置の場合は取締役互選書、株主総会議事録)を、法務局へ書面で・・・提出する場合には、出席取締役・出席監査役の全員(互選書の場合は取締役全員、株主総会議事録の場合は議長と出席取締役)が個人実印を押印したうえ、各印鑑証明書を提出する必要があります(商業登記規則61条6項本文)。ただし、変更前の代表取締役が登記所への届出印を押印した場合は、この限りでなく、個人実印の押印と印鑑証明書の提出は不要(認印による押印でも可)となります(同項本文)。

商業登記規則 第61条第6項
代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑

そして、当該書面情報をPDFファイルとしてオンライン申請で添付するには、当該PDFは「添付書面に市町村の印鑑証明書が必要とされているもの」(引用元PDF)に該当するので、原則として、添付書面情報の作成者全員(取締役会議事録の場合は出席取締役・出席監査役)が以下の電子証明書による電子署名を付与する必要があります(申請書を書面で提出し、添付書面をCD-R等で提出する場合も同様)。

商業・法人登記の申請をオンラインで行う場合に利用可能な電子証明書(委任状除く添付書面情報への電子署名につき)】
(「添付書面に市町村の印鑑証明書が必要とされているもの」)
(1)商業登記電子証明書
(2)公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード)
(3)特定認証業務電子証明書
 ア「セコムパスポート for G-ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
 イ「電子証明サービス(e-Probatio PS2)」(株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト)
 ウ「TDB電子認証サービスTypeA」(株式会社帝国データバンク)
 エ「AOSignサービスG2」(日本電子認証株式会社)
  (ア~エは、氏名及び住所を確認することができるものに限る。)
 オ「CTI電子入札・申請届出対応 電子認証サービス」(株式会社中電シティーアイ中部認証センター)
 カ「司法書士認証サービス」
 キ「ビジネス認証サービスタイプ1-E(一般行政手続用電子証明書)」(日本商工会議所)
 ク「ビジネス認証サービスタイプ1-G(行政書士用電子証明書)」(日本商工会議所)
(4)官職証明書
 ア「政府認証基盤(GPKI)発行の官職証明書」 イ「地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)発行の職責証明書
(5)指定公証人電子証明書

引用:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になります(令和3年2月15日から)
(1) 商業・法人登記の申請をオンラインで行う場合に使用することができる電子証明書【PDF】より

それでは、オンライン申請時の、「当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるとき」(商登規61条6項但書)は、いずれを指すのか。本取扱いについては、特に条文で規定されてはいませんが、法務省ホームページにて公表されており、本局によると、実務での扱いもそれに則るとのことです。

(注)8 例えば,添付書面情報が代表取締役の選任(重任を含む。)を証する情報(取締役会議事録等)である場合,変更前の代表取締役が(1)商業登記電子証明書,(2)公的個人認証サービス又は(3)特定認証業務電子証明書(ア~ク)のいずれかを送信すれば,他の取締役は,(6)その他(ア~カ)を送信すれば足ります。

引用:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になります(令和3年2月15日から)
(1) 商業・法人登記の申請をオンラインで行う場合に使用することができる電子証明書【PDF】最下部 注8より

(6)その他(ア~カ)
ア 「Cybertrust iTrust Signature Certification Authority」(サイバートラスト株式会社)
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)又はGreat Sign(株式会社TREASURY))
イ 「GlobalSign CA 2 for AATL」(GMOグローバルサイン株式会社)
GMO電子印鑑Agree(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)又はWAN-Sign(株式会社ワンビシアーカイブズ))
ウ 「セコムパスポート for Public ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
エ 「DocuSign Cloud Signing CA-SI1」(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
EU Advanced(ドキュサイン・ジャパン株式会社))
オ 「GlobalSign CA 3 for AATL」(GMOグローバルサイン株式会社)
クラウド契約管理Sign(ラディックス株式会社))又は(OneSpan Sign(OneSpan Japan株式会社)氏名を確認することができるものに限る。)
カ 「GlobalSign CA 6 for AATL」(GMOグローバルサイン株式会社)
GMO電子印鑑Agree(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社))

引用:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になります(令和3年2月15日から)
(1) 商業・法人登記の申請をオンラインで行う場合に使用することができる電子証明書【PDF】より

つまり、変更前の代表取締役以外はその他(ア~カ)のクラウドサインやGMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等で取締役会議事録(PDFファイル)へ電子署名し、変更前の代表取締役のみが(1)商業登記電子証明書や(2)マイナンバーカードで電子署名すれば足りるということです。

タイトルとURLをコピーしました