はじめに

2021年2月15日商業登記規則の改正により取り扱いが大きく変わり、代表取締役が実印を要する書面(代表取締役選定の取締役会議事録・委任状等)以外は、クラウドサイン等の電子署名でも可となりました。また、代表取締役が実印を要する書面は、商業登記電子証明書以外にマイナンバーカードによる電子署名が許容されるようになりました。詳しくは下記記事をご参照ください。

備考(以下の記事は2020/10/28時点の情報に基づき記載しております)

1.登記書類をPDFで送るには

 登記書類(PDF)をオンラインで法務局へ提出するには(本人申請、司法書士の代理申請どちらの場合でも)、全ての登記書類に対し、書類作成者(代表取締役等)の電子証明書と、その電子証明書による電子署名が必要となります(商業登記規則第102条)。そして、原則として、オンラインで登記書類を法務局へ提出するには、以下2種類の電子証明書が必要です。

 一つは、管轄法務局が会社・法人の代表者に対して発行する『商業登記電子証明書』です。こちらの取得は必須です。印鑑提出者である代表取締役の電子署名は、全てこの『商業登記電子証明書』を用います*。

 もう一つは、印鑑提出者である代表取締役以外の書類作成者(代表取締役以外の取締役、監査役、株式申込人等)に関しての電子証明書です。こちらは、いくつかの種類が法令・法務大臣により許容されています。内容について、後記【3.代表取締役以外が作成者の登記書類】に詳述しています。

*印鑑提出者が、商業登記規則第33条の3第1号から第3号までに掲げる事項に該当しないこと(商業登記電子証明書を取得することができる印鑑提出者)を前提としております。

登記書類をPDFで送るには?

ポイント①原則、2種類の電子証明書(と電子署名)が必要

ポイント②代表取締役は、法務局発行の『商業登記電子証明書』の取得が必須

ポイント③代表取締役以外は、法令・法務大臣指定の電子証明書が必要

 以上のように、現状では、商業登記をオンライン申請するには、原則として、2種類の電子証明書の取得が必要となり、少なくない手間とコストを要します。それらを鑑みて、従来どおり、登記書類を印刷・捺印のうえ郵送するというのも、一つの選択肢ではありますので、貴社の実情に合わせてご検討ください。

2.「商業登記電子証明書」とは

 商業登記電子証明書とは、管轄法務局が会社・法人の代表者に対して発行する電子証明書です(印鑑証明書のようなもの)。
 代表取締役(印鑑提出者である)による電子署名は、この商業登記電子証明書による電子署名に限られています(マイナンバーカードや民間事業者の電子証明書では不可です)。

A「商業登記電子証明書」の取得の流れ

  • 1/3
    「申請用総合ソフト(法務省)」でファイルを作成

  • 2/3
    登記所へ発行申請(持込or郵送)

  • 3/3
    電子証明書の取得(ダウンロード)

3.代表者以外が作成者の登記書類とは

 登記書類の全てが、印鑑提出者である代表者のみが作成者である場合には、商業登記電子証明書による電子署名のみで登記申請が可能です。
 例えば、登記書類が、株主総会議事録(印鑑提出者である代表取締役のみが記名)、株主リスト、委任状のみである場合です(書面申請であれば会社実印を押す書類のみである場合とお考えください)。

 一方で、登記書類に、取締役会議事録や就任承諾書、株式申込証等、印鑑提出者である代表者以外を作成者に含む場合には、当該作成者の指定された電子証明書の取得と電子署名の付与が、さらに必要となります。

 登記書類に何が必要であるかは、貴社の現況や手続によって異なりますので、弊所までお気軽にお問い合わせ下さい。

登記書類が下記のみの場合は、商業登記電子証明書のみでOK
・株主総会議事録*、株主リスト
・定款写し(設立時除く)
・払込証明書、資本金計上証明書
・登記申請委任状 等

*押印者が印鑑提出者である代表取締役のみである場合

登記書類に下記を含む場合は、指定の電子証明書が必要
・取締役会議事録
・就任承諾書、運転免許証の写し
・株式/新株予約権申込証
・株主名簿管理人との契約書 等

4.代表者以外の電子証明書について

 印鑑提出者である代表者以外(代表でない取締役や監査役、株式引受人等)の電子署名は、法令又は法務大臣に指定されております。

 現状では、①公的個人認証サービス電子証明書、②特定認証業務電子証明書又は③指定公証人電子証明書④その他法務省が認めるものに限定されております。

 例)①公的個人認証サービス電子証明書を用いて、取締役会議事録に電子署名を付与する場合

代表取締役(印鑑提出者)
↓↓↓
商業登記電子証明書による電子署名

その他出席取締役・監査役の全員
↓↓↓
マイナンバーカードの電子証明書による電子署名

参考:電子証明書の取得(法務省)

①公的個人認証サービス電子証明書
市区町村窓口で交付されるマイナンバーカードに格納されているもの(原則として電子証明書の発行・記録の手数料は無料)

②特定認証業務電子証明書
1.「セコムパスポート for G-ID
(セコムトラストシステムズ株式会社)
2.「電子認証サービス(e-Probatio PS2)
(株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト)
3.「TDB電子認証サービスTypeA
(株式会社帝国データバンク)
4.「AOSignサービスG2」(日本電子認証株式会社)

以下の電子証明書が、法務省の発表により追加されています(令和2年10月28日更新)。
(ただし、新任代表取締役の就任承諾書や新任代表取締役を選定した書類など一部の書類には利用できません。詳しくはお問い合わせください。)

1.「Cybertrust iTrust Signature Certification Authority」
(サイバートラスト株式会社)
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)
Great Sign(株式会社TREASURY)
2.「GlobalSign CA 2 for AATL」
(GMOグローバルサイン株式会社)
GMO電子印鑑Agree(GMOクラウド株式会社)
WAN-Sign(株式会社ワンビシアーカイブズ)
3.「セコムパスポート for Public ID
(セコムトラストシステムズ株式会社)
4.「DocuSign Cloud Signing CA-SI1」
(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
EU Advanced(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
5.「GlobalSign CA 3 for AATL」
(GMOグローバルサイン株式会社)
クラウド契約管理Sign(ラディックス株式会社)
6.「GlobalSign CA 6 for AATL」(GMOグローバルサイン株式会社)
GMO電子印鑑Agree(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

B 代表者以外の電子証明書の取得の流れ

代表者(印鑑提出者)以外は、下記①あるいは②どちらかの電子証明書の取得が必要となります。

①公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード)の発行・更新

住民票のある市区町村役場の受付窓口にある申請書に記入し、マイナンバーカードとともに提出してください。本人確認書類が必要です。暗証番号を設定し、手続き完了後、電子証明書が記録されたマイナンバーカードをその場で受け取ります。原則として無料ですが、更新・再発行の場合は手数料(500円程度)が必要です。

(電子証明書は原則として発行の日後5回目の誕生日まで有効です。ただし、署名用電子証明書については、住所・氏名・性別が変更された場合には無効となります。さらに、電子証明書の格納媒体であるマイナンバーカードの有効期間が満了となった時点で、電子証明書の有効期間も満了します。)

参考:公的個人認証サービスによる電子証明書(総務省)

②特定認証業務電子証明書等の取得

特定認証業務電子証明書やその他法務省が認める電子証明書の取得方法は、各事業者のウェブサイトにてご確認くださいませ。

1「セコムパスポート for G-ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
2「電子認証サービス(e-Probatio PS2)」(株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト)
3「TDB電子認証サービスTypeA」(株式会社帝国データバンク)
4「クラウドサイン」(弁護士ドットコム株式会社)
5「GMO電子印鑑Agree」(GMOクラウド株式会社)
6「セコムパスポート for Public ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
7「WAN-Sign」(株式会社ワンビシアーカイブズ))
8「EU Advanced」(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
9「クラウド契約管理Sign」(ラディックス株式会社)
10「Great Sign」(株式会社TREASURY)

参考:電子証明書の取得(法務省)

導入コスト比較

サービス名称費用(税抜)
公的個人認証サービス電子証明書」(マイナンバーカード)0円
セコムパスポート for G-ID」(タイプB/DL/2年版)14,000円/枚
電子認証サービス(e-Probatio PS2)」(2年版)23,800円/枚
TDB電子認証サービスTypeA」(2年版)28,000円/枚
クラウドサイン」(Standard plus)月20,000円
GMO電子印鑑Agree」(ビジネス)月20,000円
2020年6月15日付けで各社ウェブサイトにて確認できた情報にて作成

*各サービスにより、その他加算費用・割引がありますので詳細・最新情報は必ずリンク先にてご確認ください

*「公的個人認証サービス電子証明書」(マイナンバーカード)は導入・維持コストがもっとも安価です。ただし、市販のICカードリーダーが必要です。

*「セコムパスポート for G-ID」、「電子認証サービス(e-Probatio PS2)」、「TDB電子認証サービスTypeA」については、電子署名を行う人数分の電子証明書が必要となることにご注意下さい。

*「クラウドサイン」、「GMO電子印鑑Agree」については、月額の費用であることにご注意下さい。

C 登記書類PDFに電子署名を付与するには

登記書類に関して、代表取締役(印鑑提出者)は①の電子証明書による電子署名(必須)、それ以外の作成者は②か③の電子証明書による電子署名が必要です。

①商業登記電子証明書による電子署名(必須)

  • 1/3
    「申請用総合ソフト(法務省)」を起動

  • 2/3
    電子署名を付与したいPDFファイルを選択
  • 3/3
    商業登記電子証明書で電子署名

②公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード)

  • 1/3
    ICカードリーダーをセットアップ
  • 2/3
    「JPKI利用者クライアントソフト」をインストール

  • 3/3
    「申請用総合ソフト(法務省)」で電子署名

③特定認証業務電子証明書等による電子署名

民間事業者の電子署名付与の方法は、各事業者の窓口にお問い合わせ下さい。

1「セコムパスポート for G-ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
2「電子認証サービス(e-Probatio PS2)」(株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト)
3「TDB電子認証サービスTypeA」(株式会社帝国データバンク)
4「クラウドサイン」(弁護士ドットコム株式会社)
5「GMO電子印鑑Agree」(GMOクラウド株式会社)
6「セコムパスポート for Public ID」(セコムトラストシステムズ株式会社)
7「WAN-Sign」(株式会社ワンビシアーカイブズ))
8「EU Advanced」(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
9「クラウド契約管理Sign」(ラディックス株式会社)
10「Great Sign」(株式会社TREASURY)

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