商業・法人登記事務の取扱い(「令和3年1月29日法務省民商第10号通達」抜粋)

会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)〔令和3年1月29日付法務省民商第10号〕が発出されました。重要部分を抜粋します。

第1 印鑑提出の任意化

・印鑑提出の任意化(旧商登法20条1項削除)に伴い、印鑑提出・印鑑証明書添付を求める規定(旧商登法51条1項-本店移転の経由申請-、87条3項-吸収分割・新設分割の経由申請-、91条3項-株式交換・株式移転の経由申請-、旧商登規24条7号)と、印鑑提出を前提とした申請却下規定(旧商登法24条7号)が削除

・書面申請(オンライン申請で、委任状を書面で作成し提出する場合含む)のときは印鑑提出義務継続

・登記所届出印を押印しなければならない書面
 ▷申請書又は代理権限証書(書面申請の場合)

・印鑑を提出している場合に登記所届出印を押印すべき書面
 1.印鑑届出書(登記所に提出する印鑑を明らかにする書面)
 2.保証書(支配人又は代表者若しくは管財人等の職務を行うべき者の印鑑に相違ないことを保証した書面)
 3.管財人等の職務を行うべき者として指名された者であって印鑑の提出をしたものがその資格を喪失した旨の届出書

・登記所届出印の押印又は押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付が必要な書面
 1.商登法30条2項及び31条2項に規定する譲渡人の承諾書
 2.代表取締役等(印鑑提出者)に係る辞任を証する書面

(筆者注:そのほか、取締役会設置会社における代表取締役選定書面等も含まれるものと思われます)

・「印鑑提出者」は「被証明者」、「印鑑届出事項」は「被証明事項」の用語に改められた

第2 商業登記で使用できる電子証明書

・書面申請時のCD-R等電磁的記録の電子証明書(商登規36条4項1号ロ・ハ、第2号ロ・ハ)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID等
(添付書面(委任状除く)に市町村の印鑑証明書が必要とならないものは、クラウドサイン、GMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等でも可)

・書面申請時の電磁的記録の方式の指定は告示されるが、具体的な電子証明書については法務省HPで公開

・オンライン登記の申請書の電子証明書(商登規102条3項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID等

・オンライン登記の添付情報の電子署名・電子証明書(商登規102条4号、5号)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID等
(添付書面(委任状除く)に市町村の印鑑証明書が必要とならないものは、クラウドサイン、GMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等でも可)

・オンラインで印鑑証明書を請求するときの電子証明書(商登規102条3項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID

商業登記規則改正後に利用できる電子署名サービスと添付書面情報については下記にまとめています。

関連記事▶商業登記規則改正案(令和3年2月15日施行)の衝撃
関連記事▶役員就任時の印鑑証明書とクラウドサインの利用可否についての整理

参考:(法務省)商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になります(令和3年2月15日から)

第3 オンライン印鑑提出、商業登記電子証明書の請求

・オンラインの印鑑届出・廃止ができるのは、オンライン登記申請と同時の場合のみ

・オンラインの印鑑届書・廃止届書の電子証明書(商登規102条3項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID

・オンラインの印鑑届書・廃止届書の添付書面(保証書)の電子署名・電子証明書(商登規102条5項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID、クラウドサイン、GMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等

・オンラインの印鑑届書▷解像度600dpi目安・要PDF化・目盛りありの専用様式で提出・原本を要請される場合有り

・オンラインで商業登記電子証明書を取得するときの申請書の電子証明書(商登規102条3項、4項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID

・オンラインで商業登記電子証明書を取得するときの委任状の電子証明書(商登規102条5項)
 ▷商業登記電子証明書、マイナンバーカード、セコムパスポート for G-ID、クラウドサイン、GMO電子印鑑Agree、ドキュサイン等

・オンラインで商業登記電子証明書を請求するときは電子納付のみ(商登規106条の2第6項)

第4 押印規定の見直し

法務局ホームページでも各添付書面への押印の要否が公表されました(令和4年)。
関連記事▶法務省:申請書、各添付書面等の押印の要否について(商業・法人登記) (moj.go.jp)

・登記簿附属書類閲覧の申請書▷署名・押印不要に

・事業を廃止していない旨の届出▷記名押印不要に

・再使用証明申出書▷押印欄削除(商登準則別記第50様式)

・定款、取締役会議事録、取締役の一致を証する書面▷署名、記名押印義務は継続

・不正登記防止申出書・取下書▷押印義務は継続

・登記された事項につき無効の原因があることを証する書面▷押印義務は継続

・法令上、押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面(例:株主リスト、資本金の額の計上を証する書面等)
 ▷押印の有無について審査を要しない

・原本還付書類謄本(商登規49条2項)、取締役就任時の本人確認書類の謄本(商登規61条7項)は、押印の有無について審査を要しない

・訂正印(捨印)▷法令上根拠があるものを除き、押印の有無について審査を要しない

・契印▷法令上根拠があるものを除き、押印の有無について審査を要しない

第5 定款認証及び設立登記の同時申請

・同時申請のとき、申請日当日中に定款認証されないときは設立登記却下される

・設立時役員等が5人以内、添付書面がすべて電磁的記録かつ電子納付の場合は24時間以内処理

第6 法人登記事務の取扱い

第1から第4までの取り扱いは、会社以外の法人並びに投資事業有限責任組合(LPS)、有限責任事業組合(LLP)及び限定責任信託に係る登記事務においても同様とされる

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